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★ 静態的アプローチによる所要資金計算の弱点

  貸借対照表分割分析法は、本業たる事業の発展を目的として投下された資本を運転資本と設備資本とに分類し、投下資金の運用のあり方を調達方法のあり方と関連させて検証する方法であるが、前述のモデル企業を回転期間表示で単純に

  a) 営業貸借対照表(正味運転資金)

  b) 投下資金貸借対照表(資金運用表)に分解してみると、

営業貸借対照表(正味運転資金)

売上債権 7.05ヶ月仕入債務 3.00ヶ月
商品在庫 1.25ヶ月運転資金 5.3ヶ月
    合計 8.3ヶ月  合計 8.3ヶ月

投下資金貸借対照表(資金運用表)

投下資金の運用投下資金の調達
運転資金 5.3ヶ月
設備資金 2.78ヶ月金融資金 8.8ヶ月
雑資金 3.52ヶ月剰余資金 4.87ヶ月
雑務資金 2.4ヶ月資本金 0.33ヶ月
    合計 14.0ヶ月    合計 14.0ヶ月

  調達した資金はこのように運用され、前述の資金運用表とは別の面から見ることが出来ます。

● 資金調達の方法は適正であるか ?

● 資金の運用面に問題は無いか ?

● 営業規模から判断して運転資金は適正であるか ?

  また、営業貸借対照表の営業運転資金を求める方法として、

営業運転資金 = (売上債権  +  商品 ) −   仕入債務

1,105(百万) 1,467(百万)  261(百万)    623(百万)という計算方法があります。

  仕入債務の623百万に対する営業運転資金1,105百万という関係から、支払能力の概念が生まれたのでしょうか?

  営業運転資金を拡大した運転資本運用表では、流動資産から流動負債を除したものが正味運転資本と等しく、これを比率に置き換えて流動比率を求めます。

流動資産   ÷   流動負債    =  流動比率

2,287(百万) 1,939(百万)     117.9%

  これは運転資本の状況を把握するため短期支払能力を計測する指標であり、経営分析の中心項目となっています。  また、正味の運転資本を検証する方法として、

正味運転資本 = (固定負債 +  資本勘定)  −   固定資産
348(百万)    677(百万)  306(百万)      635(百万)

  という方法もありますが、営業運転資金計算・流動比率計算・正味運転資本計算のいずれも期末の貸借対照表の数値を用いて計算するため、在り高概念による静態的観察方法となり、平面的な分析結果になる傾向を持ちます。

資金の調達や運用状況分析を標榜しながら、肝心の"資金の動き"を捕らえることができないのです。本来、運転資本の状況とは、期末時点の負債を支払いうる能力のみを分析するものではなく、継続的な経営の中でどのようなバランスが保たれているのかが把握できるものでなければならないのです。

 短期負債に対して支払財源となる流動資産に、もしも不良債権(回収不能債権)、陳腐化した商品、戦力外となった商品、汚損商品などが存在すれば、上記の数値はたちまち支払能力・安全性を定義する指標にふさわしくないものとなります。

 前述いたしました営業貸借対照表計算で述べました諸回転期間は、資金の動きを把握する方法として動態的な観察方法であるということができます。

売上債権回転期間 7.05ヶ月
商品回転期間  1.25ヶ月
仕入債務回転期間 3.00ヶ月
運転資金  5.3ヶ月

  在り高概念を基本にした正味運転資本・流動比率は、資金の収入・支出を意味しているのではなく、期末における交換未完了の在り高に過ぎません。正味運転資本が増えれば直ちに「資金が余った」という見方は誤りなのです。

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